「ゼンガクジ フリー コーヒースタンド」から生まれた“コーヒータイム”のブランド、「Masako Mutsumi by Zengakuji free coffee (マサコムツミ バイ ゼンガクジ フリー コーヒー)」。2022年5月、「あなたの日常に、特別なコーヒータイムを」をコンセプトに掲げて始まったMasakoとMutsumiの物語を語る上で欠かせないのが、シグネチャーデザートである『スペシャルティチーズケーキ』です。
「おいしいコーヒーで人と人とをつなぐために、コーヒーのベストパートナーを作りたい」
コンセプター Mutsumiのそんな熱い想いを受けてシェフ・Masakoが目指したのは、Mutsumiのコーヒーに寄り添うスイーツ。
たとえ遠く離れていても、「おいしい」の共感は、心の距離をぐっと縮めてくれます。だからこそ、ひとりでも多くの人に受け入れてもらえるものをつくりたいと『スペシャルティチーズケーキ』に込めた、Masakoのメッセージをお伝えします。
Masako Mutsumi by Zengakuji free coffeeとは
「あなたの日常に、特別なコーヒータイムを」をコンセプトに、ブランドコンセプターであり「ゼンガクジ フリー コーヒースタンド」のオーナーバリスタ・Mutsumiがセレクトしたシングルオリジンコーヒーと、ミシュランガイドビブグルマン獲得経歴を持つシェフ・Masakoが作る『スペシャルティチーズケーキ』をはじめとした洋菓子をオンライン販売する、“コーヒータイム”のブランド。「コーヒーを丁寧に淹れるだけで、1日がちょっと豊かになる」。わたしたちがお届けしたコーヒーやスイーツを通して、そんな気持ちを共有できると嬉しいです。
Masako Mutsumi by Zengakuji free coffee
Chapter.2|パティシエ Masakoのストーリー
オファーを受け、自然と出た「YES」の答え。Mutsumiと一緒に豊かな時間を届けたい
「コーヒーのベストパートナーを作ってほしい」
Mutsumiからそうオファーを受けたとき、今思うと不思議なほどに「いいよ」という言葉が自然に出てきたように思います。というのも、「ゼンガクジ フリー コーヒースタンド」が立ち上がる以前から、彼女が夫婦で「スペシャルティコーヒーを無料で提供する寺院コミュニティ」を計画していることは聞いていました。「コーヒーで人をつなぐ」というアイデアやそのユニークな取り組みにすごく共感しましたし、実際にフリーコーヒーがスタートしてからは私もときどき、地域の皆さんと一緒にMutsumiが淹れてくれる1杯を楽しみに行っていたんです。
Chapter.1でMutsumiが「『おいしい』の共感は、相手との距離をぐっと縮める」と話していましたよね。思い返せばわたしたち2人のつながりも「おいしい」の共感が始まりでした。出会いは10年以上前、わたしが駆け出しの頃から腕を磨いていたフレンチレストラン「ムッシュ・ヨースケ」に彼女がアルバイトとして入ってきたこと。それからはよく一緒に飲みに行ったり、好きなレストランやパティスリーを食べ歩いたり。旅行に行っても、やっぱりメインは2人が「おいしい」と思えるもので。
おいしいものには人を笑顔にし、輪をつくるチカラがある。高校を卒業してから料理一筋で生きてきたわたしにとっても、それはずっと感じてきたことです。Mutsumiが選ぶコーヒーを少しでも多くの方に届ける力になれるなら……、Mutsumiとわたしの「おいしい」で、皆さんに豊かなコーヒータイムを届けられたらどんなに楽しいだろう……と、素直に感じたのだと思います。
Mutsumiのコーヒーが主役になる = みんなに受け入れてもらえるスイーツ
とはいうものの、実際の商品づくりはとにかく迷走の連続で(笑)。「コーヒーに合う」、聞き慣れた言葉ですが、浅煎りか深煎りか、ブレンドかシングルオリジンか、また産地や淹れ方など、ひとことでコーヒーといってもその味わいは無数。さらに、ひとりひとりに“自分なりの好み”がある飲みものだと思うんです。
だからこそ、一番の軸に据えたのは「Mutsumiが選ぶコーヒーが主役になる」お菓子をつくること。これまで培ってきた料理の世界でセオリーだった「主役はスイーツ、コーヒーは引き立て役」という考えではなく、いわばMutsumiのコーヒーに寄り添うようなスイーツをつくりたいと考えました。
では、Mutsumiのコーヒーはどんなコーヒーか —— 。これは、わたし自身が大切にしてきた料理人観にすごく近いのですが、彼女のコーヒーは、「たとえ好みが違っても、『おいしいコーヒーが飲みたい』というすべての人に受け入れてもらえるコーヒー」だと思っています。スペシャルティコーヒーらしいフレッシュな果実味がしっかりと感じられつつ、ほどよい飲みごたえとコクがあって深煎りのコーヒーが好きな人にも満足してもらえる。
確かに、斬新な味や香りなどインパクトのあるものは新鮮です。でもやっぱり、お客様が思い描くおいしさをまずはしっかり届けることが大前提で、その“安心感”の中でいかに、つくり手のメッセージを表現できるかが勝負だと思っています。
Masako Mutsumiブランドが掲げるのは「豊かなコーヒータイムを、多くの方にお届けすること」。そのためには、みんなに普遍的に愛されるスイーツ……、チーズケーキかなと絞り込んでいきました。
ベースになったのはMasakoの“いつもの”ケーキ
配合や焼き方を変えてはMutsumiに食べてもらって、また改良しては感想を聞いて、試作品は数え切れないほど作りました。でも最終的にベースになったのは、実はわたしが昔からずっと家でつくり続けていたシンプルなチーズケーキでした。
いろいろ考えすぎて道を見失いかけていたとき、ふと、食べ慣れた“いつものケーキ”をMutsumiに食べてもらったら「これが一番おいしかった〜!」って。結局、ずっと好きでつくっているものが自分にとって一番の「おいしい」の基準だったんでしょうね。そして何より、それに共感してもらったこともすごく嬉しかった。
そこからブラッシュアップする中で意識したのは、甘すぎず、重すぎず、尖りすぎず、スタンダードであること。Mutsumiが選ぶコーヒーに寄り添い、多くの人に受け入れてもらうためには、角がないものに仕上げたかったからです。ただメリハリは必要なので、オレンジリキュールでほのかな香りをプラス。高温・短時間で焼くことでベイクドでありながらも滑らかな口当たりに仕上げ、レア・スフレ・バスクなど、それぞれ好みのチーズケーキがある方にも「おいしい」と思ってもらえるものを目指しました。冷凍での配送を考慮し、冷凍・半解凍・解凍と、3段階で異なる味わいと食感が楽しめる工夫も加えて。
Mutsumiのコーヒーと一緒に楽しんで
私は2020年に東京を離れて青森県田子町(たっこ・まち)のにんにく農家「種子にんにく農園」に嫁ぎ、今は農家の目線でふたたびフランス料理やお菓子の活動を始めています。
そんな田子町に今年の5月、「めちゃくちゃフリーコーヒー」プロジェクトの一環で「ゼンガクジ フリー コーヒースタンド」が出張フリーコーヒーにやって来たことで、MutsumiのコーヒーとMasakoの『スペシャルティチーズケーキ』の直接提供が実現! たくさんのお客様にMutsumiが淹れたコーヒーと一緒にチーズケーキを楽しんでいただけたことが、本当に嬉しかった。わたしとMutsumiの「おいしい」を皆さんと共有し、心の距離が縮まった瞬間でした。
そしてそのとき、あらためて実感したんです。フリーコーヒーはMutsumiをはじめ、こうしてコミュニティに集まる人がいるからまた、たくさんの人が集まって来るんだなって。コーヒーやスイーツがおいしいことはもちろんすごく大切だけど、「誰がつくっているのか」「そこに誰がいるのか」が、きっと人の心を動かす何よりのチカラになる。思えば、東京でのシェフ時代の常連のお客様も、今「種子にんにく農園」のにんにくを購入してくださる方も同じです。
普通に暮らしていたら出会わないであろうたくさんの方と、「Masako Mutsumi by Zengakuji free coffee」を通じて、フリーコーヒーのコミュニティとしてつながれるとわたしも嬉しいなと思っています。だからやっぱりMasako MutsumiのスイーツはMutsumiセレクトのコーヒーと一緒に召し上がってほしい。おいしさがアップすると共に、より大きな人の輪でつながれると思うから。それからまた、Mutsumiと一緒に直接お届けできる機会も今後つくっていけるといいですね。
Masako Mutsumi by Zengakuji free coffee
<オンラインショップ>
https://shop.masako-mutsumi.com/
取材・編集=RIN
撮影=山本陸