「おいしい」コーヒータイムで、人と人をつなぐ。Masako Mutsumiが届けたいストーリー(前編)

ストーリー

まだ窮屈な生活が続くさなかの2022年5月、「ゼンガクジ フリー コーヒースタンド」から生まれた“コーヒータイム”のブランド、「Masako Mutsumi by Zengakuji free coffee(マサコムツミ バイ ゼンガクジ フリー コーヒー)」は始まりました。

あなたの日常に、特別なコーヒータイムを——。

掲げたのはそんなメッセージ。「ゼンガクジ フリー コーヒースタンド」でオーナーバリスタを務めるMutsumiと、Mutsumiがリスペクトしてやまないシェフ・Masakoがタッグを組み、皆さまに幸せなコーヒータイムをお届けすべくコーヒー豆と洋菓子を販売しています。

ブランドスタートから1年が経ち、ふたたび世の中が前を向いて動き出した今あらためて、わたしたちの想いを伝えたいと思います。

コンセプターのMutsumi(左)とパティシエのMasako(右)。青森県の田子町での出張フリーコーヒーの1コマ
コンセプターのMutsumi(左)とパティシエのMasako(右)。青森県の田子町での出張フリーコーヒーの1コマ

Masako Mutsumi by Zengakuji free coffeeとは

「あなたの日常に、特別なコーヒータイムを」をコンセプトに、ブランドコンセプターであり「ゼンガクジ フリー コーヒースタンド」のオーナーバリスタ・Mutsumiがセレクトしたシングルオリジンコーヒーと、ミシュランガイドビブグルマン獲得経歴を持つシェフ・Masakoが作る『スペシャルティチーズケーキ』をはじめとした洋菓子をオンライン販売する、“コーヒータイム”のブランド。「コーヒーを丁寧に淹れるだけで、1日がちょっと豊かになる」。わたしたちがお届けしたコーヒーやスイーツを通して、そんな気持ちを共有できると嬉しいです。

Masako Mutsumi by Zengakuji free coffee

Chapter.1|コンセプター Mutsumiのストーリー

「ゼンガクジ フリー コーヒースタンド」でのMutsumi
「ゼンガクジ フリー コーヒースタンド」でのMutsumi

始まりは「コーヒーのベストパートナーを作りたい」

わたしは、コーヒーには人と人をつなぐ力があると思っています。2017年12月に夫と一緒に立ち上げた、スペシャルティコーヒーを無料で提供する寺院コミュニティ「ゼンガクジ フリー コーヒースタンド」でバリスタとして活動しているのも、その力を信じているからです。毎週たくさんの方に来ていただき、わたしたちが大好きな「THE ROASTERY BY NOZY COFFEE」さんのコーヒーを通じて地域の方同士が触れ合い、交流が広がっていくのを肌で感じてきました。

取材も「ゼンガクジ フリー コーヒースタンド」で行われました
取材も「ゼンガクジ フリー コーヒースタンド」で行われました

そんな中で、より皆さんといいコーヒータイムを過ごすためにも「コーヒーのベストパートナーとなるスイーツを作りたい」と思うようになったのが、Masako Mutsumiブランドのそもそもの始まりです。2020年頃から少しずつ企画を練ったり試作をしたりと準備をしていたのですが、奇しくも当時は新型コロナウイルスが猛威を奮っていた時分。フリーコーヒーの活動は何度も休止を余儀なくされ、この場に集うことで築いてきたコーヒーを通じたコミュニティの再構築が求められました。

直接届けられないなら、おうちで楽しんでもらえるものを。
顔は見えなくても、同じ「おいしい」を共有することで近くに感じてもらえるものを ——。

そんな気持ちが日に日に強くなり、ブランド設計を加速させていったという経緯があります。

みんなが「おいしい」と思えるお菓子を作れるのは、Masakoしかいない

Masakoが拠点とする青森県の田子町の厨房にて
Masakoが拠点とする青森県の田子町の厨房にて

スイーツを作るにあたってオファーをしたのは、学生時代のアルバイト先の先輩であり、その後ミシュランガイドのビブグルマンを4年連続で獲得した「Aminima」(渋谷区)の元シェフ・Masakoさん。わたしは当時から彼女の作る料理やデザートが大好きで、機会があれば一緒になにかしたいと思っていました。

Masakoさんは、誰もが「おいしい」と思えるものを作ってくれる人です。もちろん、すごく個性やインパクトの強い料理が得意なシェフの方もたくさんいらっしゃいますが、わたしたちが届けたいのは、コーヒーと一緒にそれを食べることでより豊かな気持ちになれるスイーツ。スッと身体になじむようなやさしいおいしさも、香りやテクスチャーなどのエッセンスでちょっと特別な幸せをくれるお菓子を作れるのも、彼女しかいないと思いました。

「Masako Mutsumi by Zengakuji free coffee」のシグネチャー『スペシャルティチーズケーキ』
「Masako Mutsumi by Zengakuji free coffee」のシグネチャー『スペシャルティチーズケーキ』

わたしの想いをぶつけると快く受け止めてくださり、約1年半かけて、「Masako Mutsumi by Zengakuji free coffee」のシグネチャー『スペシャルティチーズケーキ』が完成したのです。

オンライン販売でも本質は同じ。コーヒーは人と人をつなぐ

スペシャルティコーヒーを無料で提供している「ゼンガクジ フリー コーヒースタンド」と異なり、「Masako Mutsumi by Zengakuji free coffee」ではコーヒー豆やスイーツを“販売”しています。ただ、「スペシャルティコーヒーを通じて、人と人をつなぐ」という本質は変わりません。

スペシャルティチーズケーキの包装には、Masakoの手書きメッセージが
スペシャルティチーズケーキの包装には、Masakoの手書きメッセージが

あえて別ブランドにした理由のひとつに、「ゼンガクジ フリー コーヒースタンド」には、金銭の授受が発生しないフリー(無料)であることで、“お店とお客さん”ではなく全員が“フラット・平等”な関係でつながる場という、根本の考えがあります。運営者であるわたしたち自身も、みなさんと対等のコミュニティの一員であることが肝。なのでここで販売をしてしまうと、その理念が崩れてしまいかねません。

フリーコーヒーは、実際に会って・話して・笑って、ゆるくつながるコミュニティ。であればそこに、新たにMasako Mutsumiブランドが加わることで、直接来られない方やまだフリーコーヒーのことを知らない方、食に興味のある方など、地域とは異なるかたちで関われる場ができるのではと思ったのです。より広いつながりを生むことができればと思っています。

「おいしい」を共有・共感できれば、ぐっと距離が縮まる

自らの想いを伝えるMutsumi
自らの想いを伝えるMutsumi

コーヒーを丁寧に淹れる ——。不思議だけど、それだけでちょっと豊かな気持ちになります。ブランド立ち上げ当初はコロナ禍だったことも重なって、そんな豊かなコーヒータイムを届けたいという想いが一番にありました。

でも今、「ゼンガクジ フリー コーヒースタンド」で取り組んでいる、100ヶ所での出張フリーコーヒーの開催・100人のゲストバリスタの招待を目標とした「めちゃくちゃフリーコーヒー」がどんどん広がりを見せ、わたし自身もたくさんの方と触れ合う機会が増える中で、「THE ROASTERY BY NOZY COFFEE」さんのコーヒーやMasakoさんのスイーツなど、自分たちが自信を持って「好き! おいしい!」と思えるものをもっとみんなに共有したい、シェアしたいという想いが強まっています。

スペシャルティチーズケーキを食べながら、Instagramライブも
スペシャルティチーズケーキを食べながら、Instagramライブも

なぜなら、「おいしい」を誰かと共有しそれが共感につながった瞬間、その人との距離がぐっと縮まる気がするから。「おいしいね」「わたしもこれ好き!」といった共感は、いわば小さなお互いの理解。物理的には遠く離れた場所にいたり、たとえプライベートな部分はあまり知らなかったりする人でも、同じ気持ちだと知るだけでなんだかすごく身近に感じられると思うんです。

コミュニティへの入り口は、ふたつある方がいい

つながりが生まれる「ゼンガクジ フリー コーヒースタンド」

今、街にはコーヒー店やスイーツ店が無数にある中で、Masako Mutsumiの商品を手に取ってくださる方がいることには感謝しかありません。ほんと、足を向けて寝られないくらい(笑)。もちろん当初のお客様は、友人やフリーコーヒーに来てくださった方など知り合いの方が多かったですが、それもひとつのコーヒーを通じたつながりだと思っています。まずはわたしたちと直接つながっている方が手に取ってくれて、その方たちからまた誰かにつながっていく。少しずつでもバトンが渡っていけば嬉しいですね。

ブランドスタート時の撮影でのオフショット
ブランドスタート時の撮影でのオフショット

現代は単に利便性や価格でモノを買う時代から、「あの人が作っているから」「あの人がおすすめしているから」「あの人を応援したいから」など、自分にとっての価値観を重視する時代に変わってきました。そうした人と人のつながりがあれば、経済的にすごく裕福じゃなくても、ちょっと幸せに暮らせるのではないでしょうか。フリーコーヒーを入り口にMasako Mutsumiブランドを知ってくださる方がいて、逆にMasako Mutsumiを入り口にフリーコーヒーの輪が広がる。コミュニティへの入り口は、ひとつよりふたつあったほうがいいですよね。

Mutsumiがセレクトした「Masako Mutsumi by Zengakuji free coffee」のコーヒー豆
Mutsumiがセレクトした「Masako Mutsumi by Zengakuji free coffee」のコーヒー豆

大人になってから新しい出会いがこんなにあるなんて思ってもみませんでした。わたし自身もとにかく毎日が貴重で楽しくて仕方ありません! 「Masako Mutsumi by Zengakuji free coffee」のコーヒーは、季節に合わせた味わいの豆や、わたしたちが大好きなコスタリカの農園の豆など、わたしMutsumiがその時々におすすめしたいシングルオリジンのコーヒーをセレクトしてお届けしています。直接お会いできない方とも、ぜひ一緒に、季節の移ろいと豊かなコーヒータイムを共有できることを楽しみにしています。

Masako Mutsumi by Zengakuji free coffee

<オンラインショップ>
https://shop.masako-mutsumi.com/

パティシエのMasako(右)とコンセプターのMutsumi(左)
パティシエのMasako(右)とコンセプターのMutsumi(左)

取材・編集=RIN

撮影=山本陸